雑記

成人式で他人の夢を笑う最低野郎がいた話

ボクは大学受験がそこまでうまくいった方じゃなく、だからこそ、「自分のやりたいことを、次は絶対にかなえたい」という意思が強く持っていた。

文章を書くのが当時から好きだったので、「小説家になってご飯を食べたい」という夢も胸に抱いていた(今でも持っている)。

だから人の夢を、「ハハ、おいおい何言ってんのw」と笑うヤツは嫌いだ。

今回は、そんな夢を笑うヤツがいたというお話。

 

 

それは成人式のときだった

20歳。世間から大人と認定される年齢。それが自分が望んだものだろうと、そうでなくとも。

そして、世間は20歳になった若者たちをお祝いするイベントを大々的にやってくれる。

そう、成人式を。

数年前、ボクも20歳になり、成人になった。

大学2年になり、一人暮らしにも慣れたころ、成人式に出席しにボクは一度地元へと戻っていた。

成人式に参加しないという人も結構いると聞いていた。実際、ボクの身の回りにもいたし、先輩にもいかなかったという人はいた。

確かに、遠方にいるだとか、すでに働いていて休みが取れないだとか、単純に面倒だからだとか、いろいろ理由はあるだろうし。別に強制ではないので、行く義務もない。

でも、ボクは行くことにした。行きたかった。成人式に参加できるのは、その年に20歳になった人間だけ。来年にも参加できるわけではない。

今年、この一回だけ。この時を逃せば、一生成人式の祝われる側として参加することはできないのだ。

それに、というかそれ以上に、中学や高校で別れたっきりの人たちとも会ってみたかった。中学や高校で別れてしまった人は、その時から時間が止まっている。もう一度会ってみたかったし、いったい彼らが、この会わなかった間にどう変わったのか見てみたくもあったのだ。

 

新成人代表は知っている奴だった

服装もバシッと決め(と言ってもスーツだった。袴を着てもよかったかもしれない)、髪形も決めていざ会場へ。到着すると、会場のホールにはすでに新成人たちがたくさんやって来ていた。

こんなにも同い年の人たちがいたのか。壮観だった。ここにいるすべての人が、皆自分と同い年なのだ。

知らない顔の同い年たちがたくさんいた。そしてその中に、知っている顔の同い年たちも当然いた。

「おお久しぶり、ユウト!」

髪形と服装で一瞬分からなかったが、その声と顔で誰だかすぐに分かった。その懐かしさに、互いに自然と笑顔になる。

ユウト「お前変わったな~」

ユウトは全く変わんないな~、なんか安心したよ

ユウト「めちゃ変わってるだろ! ほら髪形とか!」

記憶があの頃に戻る。懐かしさが、とても嬉しかった。

ユウト「お前、今何やってんの?」

プログラマー。俺にだってなれたよ

夢をかなえたやつもいた。大学でのほほんと学生やっている自分には、そいつがちょっと眩しく見えたりして。

今度は夢を否定されないように。頑張ろうと、ボクは考えていたのだ。

席へと座る。色恋話なんて当時は無かったのに恋人のいる人がかなりいたりして、女子の中にはすでに結婚している人もいた(妊娠している人も!)。

 

成人式が始まった。つつがなく、式は進行していく。

その中で、成人式を代表して、一人が全員の前でスピーチをするというものがあった。

今年の新成人の中で、いったい誰が代表を務めるんだろう……誰が壇上に上がるのかと考えながらも、その人は自分の知らない人だろうと勝手に決めつけていた。このたくさんの新成人の中から選ばれるその人間が知人である確率よりも、知らない人である確率の方が当たり前に高かったからだ。

しかし、果たして壇上に上がったのはボクの知っている男子だった。目立ちたがりで知られていたヤツが、壇上に上がった。

驚きつつも、しかして壇上でスピーチを始めたそいつが知っている人間であろうことに、ボクは奇妙な誇らしさを感じながら、彼のスピーチを拝聴した。

彼はスピーチの中で、夢を語った。

僕は役者になるのが夢です。そのために、今劇団で日々を過ごしています

大勢の前で、彼は堂々と夢を語った。それはとてもすごいことで、勇気のあることだ。

己の夢に突き進んでいる。そんな彼に、ボクは尊敬の念を感じるべきだった。

 

なのにボクは、

ユウト「……フハッ」

そのとき、笑ってしまった。夢を語る、彼のことを。

笑ってすぐに、ボクはハッとした。

なぜ、ボクは笑ったのだ?

夢を語る彼を笑い、そしてあまつさえ下を向いてしまった。

ボクは、そのとき抱いてしまったのだ。夢を語る彼に、恥ずかしさを。大勢の前で、なにそんな夢を語っているのかと。

それは、ボクが嫌う、人の夢を笑う人間そのもので。その人間に、自分自身がなっていることに気付いて。

……なんで、彼のことを今、ボクは笑ったのだろうか。

自分をものすごく恥じた。

彼はスピーチを続けていた。でも、その言葉をボクは全く覚えていない。ボクはただひたすらに、自分を恥じていた。

強く、後悔した。恥ずかしかった。嫌う人間に、自分がなっていたことを。そしてつまり、自分はなりたくないと考えながらも、「笑う人間」が自分の中にいたことを。

夢を笑う最低野郎は、まぎれもない僕自身だったのだ。

 

 

 

黒歴史であり、自分の転機でもあった

そんなボクの小さな黒歴史。ある意味金字塔。今でもそのときを容易く思い出せる。

でも、あのときのことをボクは感謝してもいる。

あのとき最低野郎に自分がなれたから、今自分がどんな夢でも割と気軽に持てるようになったし、他の人がどんな夢を持っていようとも、それを笑うことを今度はしなくなった。

だって、自分だって無謀な夢を抱いているんだから、人のことを笑うことなんてできないのだから。

自分の欲求に素直になれるようになったのも、あの時のおかげなのかとも思っている。

今こうしてこの記事を書けているのも、たぶんあの黒歴史のおかげなような気がする。

だから、あのときスピーチをし、大勢の前で夢を堂々と語った彼に、ボクは感謝をしている。

彼とはあのときから一度も会っていない。成人式は、同級生たちが一堂に会する最後の機会だ。その日に分かれたっきり、もう二度と再会しない人たちはたくさんいる。

彼とも、もう会わないかもしれない。彼は、今でも役者を目指して頑張っているんだろうか。

もし、もしもボクの創った作品が何か世に出て、それが劇とかになって。そのときに役者として彼が出演したりしたら、それこそ夢物語だ。

まあ、妄想はするのは自由だから、そのくらい想像してもいいよね。

 

終わりっ。